ヤミ金融対策法が成立しました
2003年9月17日掲載
深刻な社会問題となっているヤミ金融問題に対処するため,与野党全党一致の議員立法により,ヤミ金融対策法が成立し,平成15年8月1日公布されました。
ただし,ヤミ金融対策法という名前の新しい法律ができた訳ではなく,従来からある貸金業規制法と出資法の規制を強化したものであり,特に刑事処罰の強化に力点がおかれています。
また,論点となっていた出資法の上限金利(29.2%)の引き下げについては見送られています。
金融庁は,ホームページ上で「貸金業登録制度の強化により,悪質な業者が安易に貸金業登録を行い暴力団等から資金を得て組織的に貸付けを行うといった事例の排除に努めるとともに,相談体制の強化や捜査当局等関係機関との一層の連携強化に努めます。」とのコメントをしています。
改正法の概要とその目的についてご紹介します。
以下の原稿の条文のうち,法令名のないものは,貸金業規制法のものです。
また,正式な法令名は次のとおりです。
- 貸金業規制法 = 貸金業の規制等に関する法律
- 出資法 = 出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律
<平成15年9月1日施行分>
- 第1 違法な広告,勧誘行為の規制
-
- 無登録業者の広告の規制(11条2項)
- 従来は,無登録業者が「広告」をすることは犯罪類型としては存在しませんでした。これは,無登録「営業」罪にて対処可能と思われていたためです。
しかし,実際に営業を行うより前の段階である「広告」の時点を捉えて処罰の対象とする方が実効性があることから,次の条文が新設されました。
「貸金業の登録を受けない者は,次に掲げる行為をしてはならない。
1 貸金業を営む旨の表示をすること。
2 貸金業を営む目的をもって,広告をし,又は貸付けの契約の締結について勧誘をすること。」
そして,これに違反すると100万円以下の罰金に処せられます(49条2号)。
- 勧誘(特定の相手方に対するもの)も,広告(不特定多数に対するもの)と同じ規制が及ぼされることとなりました(16条)。
- 第2 年利109.5%を超える貸付契約の無効
-
- 42条の2として,次の条文が新設されました。
- 「貸金業を営む者が業として行う金銭を目的とする消費貸借の契約(手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法によって金銭を交付する契約を含む。)において,年109.5%(2月29日を含む1年については年109.8%とし,1日当たりについては0.3%とする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。)の契約をしたときは,当該消費貸借の契約は,無効とする。」
- 民事と刑事
- 刑事上は,出資法により,業として金銭の貸付けを行う場合は年29.2%(1日当たり0.08%),その他の場合は年109.5%を超える割合による利息の契約をすれば,処罰されます(出資法5条1項,2項)。
ところが,民事上は,利息制限法(最高で年20%)や貸金業規制法(みなし弁済(43条1項),年29.2%)を超える契約をしても,その超過する部分の利息契約のみが無効となるだけで,元本契約と利息制限法内の利息契約はおおむね有効とされてきました。
しかし,ヤミ金融の悪質性,特に年数千%にも及ぶ高金利に対処するため,出資法において誰が行っても犯罪とされている年109.5%を超える利息での貸付契約については,民事上も,元本契約および利息契約とも,すべて無効とされました。
つまり,ヤミ金融は,利息制限法内の利息も,さらには元本についても,「貸金」としては返還を求めることができないこととなりました。
ただし,ヤミ金融からの金銭の交付が,当然に,民法上の不法原因給付(708条)に該当するとまではされませんでしたので,場合により,残元本相当額についての不当利得返還債務があることもあり得ます。
- 第3 罰則の大幅な引上げ
-
- ヤミ金融による取立ての締め出し ─ 高金利の要求罪の新設
- 出資法5条3項が改正され,出資法違反の利息を受領した者だけでなく,その支払を要求しただけの者も,5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し,またはこれを併科することとなりました。
これにより取立てをするだけの者も処罰されることとなります。
また,出資法5条6項が改正され,「元本以外の金銭についても,同様に利息とみなして」,同条3項の規定が適用されますから,ある日突然,通帳に金銭が振り込まれ,その額を超える金銭の支払いを求められる,いわゆる「押貸し」事案も,高金利要求罪にて対処可能です。
- 法定刑の引上げ
- 出資法の高金利違反
5年以下の懲役,1000万円(法人は3000万円)以下の罰金
併科可能(出資法8条,9条)
- 無登録営業
5年以下の懲役,1000万円(法人は1億円)以下の罰金
併科可能(47条,51条)
- 取立行為規制の違反
2年以下の懲役,300万円以下の罰金,併科可能(47条の2)
- 契約内容を明らかにする書面の不交付など
1年以下の懲役,300万円以下の罰金
併科可能(48条4号,5号)
<これから施行される分,予定では平成16年1月1日から>
- 第1 貸金業の登録制度の強化
-
- 登録申請書の記載事項の追加(4条1項)
- 貸金業務取扱主任者,営業所の電話番号を明記すること
- 添付書類の追加(4条2項)
- 申請者の本人確認のための書類(運転免許証など)を求めることとなりました。
- 登録拒否要件の拡充(6条1項)
- 人的要件(例えば,暴力団員の排除)の強化や一定の財産的基礎の要求,各営業店への主任者の設置の義務付けにより,さらに厳格な登録審査を行うこととなりました。
- 第2 取立,広告に関する規制の強化
-
- 090金融の締め出し ─ 広告に記載できる連絡先などの限定
- 携帯電話(いわゆる090金融)の番号を表示した広告は,業者の登録の有無を問わず,違法な広告となります。
| ・登録業者 |
15条2項違反,100万円以下の罰金(49条6号) |
| ・無登録業者 |
11条2項違反,100万円以下の罰金(49条2号) |
無登録業者は,そもそも広告をすること自体が違法ですから当然ですが,たとえ登録業者であっても,15条2項で「貸金業者登録簿に登録されたもの以外を表示してはならず」「携帯電話の番号は事務所の電話番号としては登録されませんから」,やはり違法な広告となります。
- 違法な取立行為の明確化
- より具体的な行為類型が定められ(21条1項),罰則も,2年以下の懲役,300万円以下の罰金へと引き上げられました。
- 正当な理由がないのに,社会通念に照らして不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に,債務者等に電話をかけ,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は債務者等の居宅を訪問すること。
- 正当な理由がないのに,債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
- はり紙,立看板その他何らの方法をもってするを問わず,債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
- 債務者等に対し,他の貸金業を営む者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することをみだりに要求すること。
- 債務者等以外の者に対し,債務者等に代わって債務を弁済することをみだりに要求すること。
- 債務者等が,貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士等に委託し,又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり,弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があった場合において,正当な理由がないのに,債務者等に対し,電話をかけ,電報を送達し,若しくはファクシミリ装置を用いて送信し,又は訪問する方法により,当該債務を弁済することを要求し,これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず,更にこれらの方法で当該債務を弁済するよう要求すること。
- 第3 督促文書に記載すべき事項の明確化 ─ 弔電督促の締め出し
-
- 督促文書には次の事項を必ず記載しなければならず,これらを漏れなく記載すると,とても脅迫的な内容にはならないとの考えに基づく規定です(21条2項)。100万円以下の罰金(49条8号)
- 商号,名称又は氏名 及び住所 並びに電話番号
- 担当者名
- 契約年月日
- 貸付金額
- 利率
- 支払の催告に係る債権の弁済期
- 支払を催告する金額
- 内閣府令で定める事項
<参考>
- 貸金業規制法では,次のとおり用語を区別して使っています。
-
| 貸金業者 |
= 登録業者のみ |
| 貸金業を営む者 |
= 登録業者 + 無登録業者 |
- 利息制限法の概略は次のとおりです。
- 利息の限度
| 元本が |
10万円未満 |
|
年20% |
| |
10万円以上100万円未満 |
|
年18% |
| |
100万円以上 |
|
年15% |
- 遅延損害金の限度(1.46倍)
| 元本が |
10万円未満 |
|
年29.2% |
| |
10万円以上100万円未満 |
|
年26.28% |
| |
100万円以上 |
|
年21.9% |
↑ ページの一番上へ戻る
|