「自由財産拡張制度の運用基準」と「その適用例」が公表されました
2004年10月28日掲載
2005年1月10日追記
新しい破産法が平成17年1月1日から施行となり,同日以降の申立てについては,この新法が適用されます。新法では,破産管財事件について自由財産拡張手続きを設けているところ,平成16年10月18日,大阪地方裁判所から,その運用基準と,適用例が公表されましたので,その全文をご紹介いたします。
ポイントは,運用基準第2項「前記1 ないし の財産であって,その評価額が20万円を超える場合,拡張を認めることが相当でない事情((2)参照)が存しないときは,拡張相当として換価等をしない」という点です。
表現形式が二重否定となっており分かりにくいですが,要するに「現金とその他の財産を合わせて合計99万円以内であれば,『通常は』拡張相当」との意味であり,最高裁判所や東京地方裁判所が想定している基準より緩和されているとのことです。
2005年1月10日・基準改訂
大阪地裁から平成16年末に公表されていた「自由財産拡張制度の運用基準」のうち,電話加入権に関する部分が修正・緩和されました。
以前は「電話加入権が複数本ある場合については,1本を除きすべて換価する」とされていましたが,昨今,電話加入権については,買取業者も激減し,財産価値を認めにくいことから,仮に回線が複数あっても,その合計が20万円以下であれば,換価を要しないものとしました。
この修正後の運用基準の全文を以下に掲げます。
- 1 下記
ないし の財産について,その評価額(注1)が20万円以下の場合
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原則として,拡張相当とする。(なお,4の99万円上限基準が適用される場合があることに注意)
| 記 |
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預貯金・積立金 |
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保険解約返戻金 |
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自動車 |
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敷金・保証金返還請求権
(契約書上の金額から滞納賃料及び60万円(明渡費用等)を控除した額で評価する。) |
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退職金債権
(原則として,支給見込額の8分の1で評価する。ただし,例えば,退職金支給が近々に行われるような場合については,4分の1とするなど,事案に応じた評価を行う。) |
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電話加入権 |
| (注1) |
例えば,保険解約返戻金が複数口あるなど,同じ項目の財産が複数ある場合には,拡張申立てがされている個々の財産を評価した上で,それを合算した項目別の総額をもって「評価額」とする。したがって,15万円の保険解約返戻金が2口あるとき(合計額30万円)でも,1口についてのみ拡張申立てがされている場合は,20万円以下と評価して拡張相当とする。 |
- 2 前記1
ないし の財産であって,その評価額が20万円を超える場合
-
| (1) |
(2)の場合以外は,拡張相当とする。(なお,4の99万円上限基準が適用される場合があることに注意) |
| (2) |
破産者の生活状況や収入見込みに照らして,当該財産を自由財産としなくとも経済的再生の機会を十分確保できると見込まれる場合(拡張を認めることが相当でない事情がある場合)は,拡張不相当とする。
この場合に当たるかどうかの判断は,具体的事案によるが,次のような類型が考えられる。 |
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| ア |
破産者の世帯収入が継続的に又は反復して一定水準以上を維持する見込みがあり,毎月の家計収支において相当程度の余剰が生じている,又は生じることが見込まれる類型 |
| (拡張不相当な例) |
| ・ |
破産者自身又は同居の配偶者が高収入を得ており,家計収支表上継続的に相当程度の余剰が生じることが見込まれる場合 |
| ・ |
直近の家計収支表上余剰は少ないが,支出において浪費が認められ,それが改善されれば,継続的に相当程度の余剰が生じることが見込まれる場合 |
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| イ |
当該財産が破産者の経済的再生に必要とはいえない類型 |
| (拡張不相当な例) |
| ・ |
所有の自動車が事業や通勤等のために不可欠とはいえない場合 |
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- 3 前記1
ないし 以外の財産(注2)及び破産開始手続後に発見された財産の場合
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原則として,拡張不相当とする。
ただし,破産者の生活状況や今後の収入見込みその他の個別的な事情に照らして,当該財産が破産者の経済的再生に必要不可欠であるという特段の事情が認められる場合には,例外的に,拡張相当とする。(なお,4の99万円上限基準が適用される場合があることに注意) |
| (注2) |
具体的には,有価証券,貸付金,売掛金,不動産等である。 |
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- 4 1ないし3の指針に従って拡張がなされると,最終的に自由財産合計額が99万円を超える場合(現金や拡張相当とされるべき20万円以下の財産も合計額に算入することに注意)
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99万円を超えないように配慮して,拡張相当とする財産を選択する(注3,4)。
ただし,調査の結果,3の特段の事情が認められる場合には,裁判所と99万円を超える拡張の可否について十分協議する。 |
| (注3) |
同じ項目の財産が複数ある場合は,その一部を選択できる。 |
| (注4) |
一部の財産につき換価を行った上,99万円を超えないように配慮して,換価により得られた金銭から管財人報酬及び換価費用を控除した額の全部又は一部を破産者に返還するという措置をとることもできる。 |
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「自由財産拡張制度の運用基準の適用例」(PDF・10.9KB)
この通用例は,破産者が以下の設例の各財産を有しており,そのすべてについて,破産者が自由財産拡張申立てを行っていることを前提とする。
- 設例1
- 現金30万円,保険解約返戻金20万円,自動車20万円
(あてはめ)
すべて拡張相当(運用基準1)。
- 設例2
- 現金30万円,保険解約返戻金50万円
(あてはめ)
保険解約返戻金について,拡張を認めることが相当でない事情が存しないと認められるときには,拡張相当(運用基準2)。
- 設例3
- 現金30万円,保険解約返戻金20万円,株券20万円
(あてはめ)
保険解約返戻金は拡張相当(運用基準1)。株券は,特段の事情がない限り拡張不相当(運用基準3)。
- 設例4
- 現金50万円,保険解約返戻金20万円,自動車20万円,退職金予定額の8分の1の額20万円
(あてはめ)
運用基準1によれば,すべて拡張相当と思われるが,自由財産の合計額が110万円で99万円を超えるため,すべてを拡張相当とすることはできない。破産者又は申立代理人と協議して,例えば,自動車を拡張の対象外とするなどの措置をとる(運用基準4)。
なお,保険解約返戻金が2口(15万円1口,5万円1口)あるような場合は,1口分(15万円)だけ拡張の対象外とする方法もある(運用基準4の注3)。
また,自動車のみ換価した上,得られた金銭から換価費用等を控除して,破産者の自由財産合計額が99万円に満つるまで返還するという措置も採り得る(運用基準4の注4)。
- 設例5
- 現金40万円,保険解約返戻金20万円,自動車30万円,退職金予定額の8分の1の額20万円
(あてはめ)
自動車について,拡張を認めることが相当でない事情があるときは,これは換価対象になるので(運用基準2),残った財産はすべて拡張相当(運用基準1)。
これに対し,拡張を認めることが相当でない事情が存しないときは,運用基準1及び2に照らすと,すべて拡張相当のようにみえるが,その場合の合計額が110万円となり99万円を超えるので,設例4と同様の処理をすることとなる(運用基準4)。
参考
自由財産とその拡張制度についての法務省の説明は次のとおりです。
- Q4 自由財産の範囲については,どのような見直しがされていますか。
- 新しい破産法では,破産者の生活の維持を図るため,標準的な世帯の必要生計費の3か月分に相当する額(99万円)の金銭を自由財産とし,破産者の経済的生活の再生の機会を更に確保することとしています。また,破産者の生活の状況や破産者が収入を得る見込みの有無等の個別の事情に応じて,裁判所が,自由財産の範囲を拡張することができる制度を創設し,破産者の生活の維持を図るとともに,その再起に資するようにしています。
- Q5 自由財産の範囲の拡張の裁判によって,どのような財産が自由財産となるのですか。
- 自由財産の範囲の拡張が認められる場合としては,まず,必要生計費の不足を補うため,自由財産となる金銭の額が引き上げられることが考えられます。また,そもそも破産者の手元に自由財産の対象となる現金がない場合には,本来,自由財産の対象とされていない預金債権等を自由財産とすることも考えられます。さらに,破産者の生活状況や職種を考慮して,必要と認められる場合には,自動車等を自由財産とすることも可能です。ただし,どのような財産が自由財産となるかについては,裁判所の判断によることになります。
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