マンション法が改正されました
2003年8月16日掲載
建物の区分所有等に関する法律(いわゆるマンション法)が,平成14年12月4日改正され,平成15年6月1日から施行されました。
マンション法は,昭和37年の制定後,昭和58年に大改正がありましたが,その後,大きな規模の改正はありませんでした。この間,平成12年末時点での分譲マンションの総戸数は約385万戸に上り,すでに築年が30年を超えるものも約12万戸に達しており,都市における居住形態として定着した反面,紛争も増加していました。また,平成7年1月発生の兵庫県南部地震・阪神淡路大震災では,かなりの数の分譲マンションが被災しましたが,それに伴い,マンション法の不備が顕在化したところでもあります。
今般のマンション法改正(平成14年改正)では,マンションの適正な管理を行い,また,その建替えの実施の円滑化を図るために,8点にわたって改正がされました。その概要は次のとおりです。
- 第1 共用部分の変更 ─ 変更手続の一部緩和
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- 共用部分の変更のうち,その形状または効用の著しい変更を伴わないものについては,区分所有者および議決権の過半数の普通決議(18条1項,39条1項)で足りることとなりました(17条)。
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マンションを維持していくためには,定期的に,外壁の塗り替えや屋上防水の修繕を行うことが必要ですが,そのために著しく多額の費用を要する場合に,従前は,区分所有者および議決権の4分の3以上の特別多数決議が必要とされており,ときに大規模修繕を円滑に実施できないことがありました。
今後は,形状または効用の著しい変更を伴わない修繕工事などであれば,規模や費用の大小を問わず,普通決議でよくなり,マンションの管理が行いやすくなりました。
- 第2 管理者および管理組合法人の代理権及び当事者適格の新設
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- 管理者および管理組合法人は,共用部分について生じた損害賠償金などの請求および受領について,区分所有者を代理する権原が与えられ(26条2項後段,47条6項後段),その権利の実現のため,訴訟の当事者となることができます(26条4項,47条8項)。
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民法上,金銭債権は分割債権とされていることから,建築工事に瑕疵があるときの担保責任に基づく損害賠償請求権や,敷地の不法占拠者に対する不当利得の返還請求権なども,各区分所有者に小額ずつ分割されてしまう,と解する判例がありました。
しかし,管理者や管理組合法人が,これら債権を一元的に管理し,相手方に対して請求することがマンションの適正な管理に役立ちますし,このことは問題が訴訟にまで発展したときも同様です。
そこで,そのための規定を新設することとしたものです。
- 第3 規約の適正化に向けて
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- マンション規約の適正化のため,30条3項として次の規定が新設されました。
対象「専有部分もしくは共用部分または建物の敷地もしくは附属設備(建物の敷地または附属施設に関する権利を含む。)につき」
考慮要素「これらの形状,面積,位置関係,使用目的および利用状況ならびに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して」
適正化「区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない」
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実際に問題となるのは,マンション分譲業者が原案を作成し,マンション購入者がこれに承諾書を差し入れる方法で設定する,いわゆる「原始規約」と呼ばれるものですが,今般の法改正でも,この原始規約問題まで踏み込んだ対策は行われず,ごく一般的な規定の新設に止まりました。
個人的には,原始規約の効力を暫定的なものにとどめ,分譲後の一定期間は規約を変更する際の要件を緩和するなどの規定を新設する方が良かったのではないかと考えています。
- 第4 管理組合の法人化の要件緩和 ─ 人数制限の撤廃
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- 管理組合が法人格を取得するために,従前は,区分所有者が30人以上あることが必要でしたが,この人数制限が撤廃されました(47条1項)。
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管理組合そのものは,マンションが存在すれば,その区分所有者を構成員として法律上,当然に成立します。そして,管理組合が法人化するためには,従前は30人以上が必要でしたが,小規模だからという理由で法人化への途を閉ざすのは合理的でないことから,この要件を撤廃することにしたものです。
なお,(1)区分所有者および議決権の4分の3以上の特別多数決議,(2)法人となる旨ならびにその名称および事務所を定め,(3)登記をすること,が要件であることは以前と同じです。
- 第5 書類・集会のIT化
- 世間のIT化にあわせての規定の新設です。
- 規約,議事録を電磁的記録によって作成すること(30条5項,42条1,2項)
- 電磁的記録によって作成・保管されている規約,議事録の閲覧方法(33条2項,42条5項)
- 集会での議決権行使について,電磁的方法による行使を認めること(39条3項)
- 第6 復旧の際の買取請求手続の整備
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- 次の3つの制度が新設され,買取請求手続が整備されました。
- 買取指定者の制度(61条8項)
- 再買取請求の制度(61条7項)
- 買取請求権行使の催告制度(61条10,11項)
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マンションの価格の2分の1を超える部分が滅失する,いわゆる大規模滅失が生じた場合,その復旧のためには,区分所有者および議決権の4分の3以上の特別多数決議を得る必要があり(61条5項),他方で,この復旧決議に賛成しなかった者には,自己の区分所有権の買取請求権が与えられています(61条7項)。
この買取請求権について,今般の改正で,
- 指定された者(区分所有者に限りません,実際にはデベロッパーでしょう)だけが買取請求の相手方となる途を開き
- その指定がないときは,買取請求の相手方となった復旧決議の賛成者が,他の賛成者に対して,2カ月間に限り,再買取の請求をできることとして,負担の衡平を図り
- 買取請求権の行使に4カ月の期間制限を設けられることとしました
これによって,復旧をスムーズに進め,早期に法律関係を確定させることが可能となりました。
- 第7 建替え決議の要件緩和,手続の整備
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- 区分所有者および議決権の5分の4以上の多数決だけで,建替え決議ができるようになりました(62条1項)。
それに合わせて,決議に至るまでの手続が整備されました(62条2〜8項)。
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平成14年改正でもっとも議論のあったところですが,改正法は,円滑な建替えの観点から,多数決だけで建替えを可能としました。
改正前は,いわゆる「費用の過分性の要件」を満たしていることが必要でしたが,これが不要となり,また,改正作業中に検討されていた「築年数の要件(例えば,築後30年の経過)」も盛り込まれませんでした。
また,改正前にあった「敷地の同一性の要件」「使用目的の同一性の要件」も不要となりましたので,理屈のうえからは,A地にある居住用マンションを,B地の商業テナント向けビルとして建て替えることを内容とする決議も可能となりました。
このように多数決という主観要件だけで建替えが可能となり,建替え決議が重大な意味を持つことから,その決議に至るまでの手続規定が整備され,他方,その効力を争う期間に制限は設けられませんでした。
- 第8 団地について
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- 団地内の建物の建替え承認決議(69条)
団地内の建物の一括建替え決議(70条)
団地については,2つの条文が新設されました。
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団地については,非常にバラエティに富んだ形態があることから,法律だけでは対応し切れないというのが正直なところですが,今般,2ケ条ですが従来の空白を埋める規定ができました。
ひとつは,共通の敷地に複数の建物がある団地において,その中の特定の建物を建て替えようとする場合の規定がなかったことから,その手続を新設したのが「団地内の建物の建替え承認決議」の規定です。
もうひとつは,複数の建物を全部建て替えようとする場合であり,「団地内の建物の一括建替え決議」の規定が新設されました。
参考文献
- 法務省民事局参事官・吉(土の下に口)田徹ほか「1問1答 改正マンション法」(商事法務,2003年)
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