法令・判例紹介


民事訴訟法が改正されました

2004年1月14日掲載

<改正の要点>

 民事訴訟法が,平成15年7月9日改正され,平成16年4月1日から施行されます。今般の民訴法改正の要点は,次のとおりです。

1 訴え提起前における証拠収集手段の拡充
 当事者が提訴前に必要な証拠や情報を入手することができるようにするため,提訴前の証拠収集手続を拡充する。
2 専門委員制度の創設
 専門的知見を要する事件の審理に当たり,裁判所が専門家の説明を聴くことができる制度を設ける。
3 地方および簡易裁判所の機能の充実
 鑑定人質問の規定の整備や,簡裁の少額訴訟の上限を60万円へ引上げ,また,和解に代わる決定を可能とする。
4 知的財産権関係訴訟の管轄の特例
 東京・大阪の地方裁判所を第1審とし,控訴審は東京高裁のみとする。
5 計画審理の推進
<改正の概要>
第1 訴えの提起前における証拠収集手段の新設
1 訴え提起前における照会(132条の2,3)
 ・132条の2
   期間制限 4ヶ月以内
   事項制限 主張立証に必要であることが「明らかな事項」
   記載事項 請求の要旨および紛争の要点を記載
 ・132条の3
   被予告通知者が,予告通知者に対して,4ヶ月以内に限り,照会可能
 ・コメント
   訴え提起後は,当事者照会(163条)が可能となりますが,それを訴
  え提起前にも可能としたものです。
2 訴え提起前における証拠収集の処分(132条の4〜9)
 ・132条の4
   申立権者 予告通知者または返答をした被予告通知者
   期間制限 予告通知から4ヶ月以内
   対  象 立証に必要であることが明らかな証拠 + 収集困難
   処分内容 (1)文書送付嘱託
        (2)調査嘱託
        (3)専門的な知識経験を有する者にその専門的な知識経験
           に基づく意見の陳述を嘱託すること
        (4)執行官に対し,物の形状,占有関係その他の現況につ
           いて調査を命ずること
 ・132条の6第4項 裁判所による文書保管は1ヶ月
 ・132条の7第1項 謄写可能
 ・132条の8    不服申立ての不許
 ・コメント
  (1)改ざんのおそれがあるときは,証拠保全手続(234条以下)によ
    るのが無難です。
  (2)文書送付嘱託,調査嘱託だけでなく,専門家の意見陳述,執行官に
    よる現況調査まで可能となったことに大きな意義があります。
     「申立人がこれを自ら収集することが困難であると認められる」と
    の解釈にもよりますが,相手方の意見を聴取することになっているこ
    とから,例えば,建築紛争において,施主と建設業者との間で,話し
    合いの継続では合意しているものの,瑕疵の有無・範囲,それによる
    補修費用の算定についてのみ齟齬がある場合,当該事項について,こ
    の手続の利用により,中立かつ専門的な第三者の意見を文書により得
    ることが可能になりました。
第2 専門委員の創設
1 専門委員の関与(92条の2)
  関与手続と当事者の同意の要否
  1項   争点整理・進行協議 −→ 当事者は意見のみ
  2項前段 証拠調べ手続    −→ 当事者は意見のみ
  2項後段 専門委員が,証人・本人尋問または鑑定人質問期日に,発問す
       るときは,当事者の同意が必要(その結果得られた供述が証拠
       となるため)
  3項   和解手続   −−−−→ 当事者の同意が必要
2 音声の送受信による通話の方法による専門委員の関与(92条の3)
3 専門委員は,非常勤の裁判所職員(92条5),除斥および忌避(92条
  の6)の対象
4 受命裁判官等は,証拠調べ手続への専門委員の関与を決定できない。これ
  のみ受訴裁判所の権限(92条の7)
5 コメント
  専門委員制度は,裁判所にとっては,便宜な制度であり,裁判迅速化には
 資するものですが,実態が専門委員による思い込みや独善による裁判となら
 ないか懸念もあるところです。
第3 地方および簡易裁判所の機能の充実
1 電話会議システムを利用した弁論準備手続期日における和解
  170条5項を削除して,電話会議でも,訴えの取下げ,和解ならびに請
 求の放棄および認諾が可能
2 受命裁判官による文書の証拠調べ(171条2項,3項)
  弁論準備手続を行う受命裁判官が,書証の申出(文書提出命令の申立てを
 除く)についての裁判を行い,文書の証拠調べが可能
3 鑑定人質問手続の規定の整備
 (1)鑑定人の意見陳述の方式等(215条2項)
    鑑定人が鑑定書を提出した後に行われる質問を,鑑定人による意見陳
   述の一環として扱うことを明示
 (2)鑑定人質問の方式(215条の2)
    鑑定人意見陳述 → 裁判長 → 鑑定の申出をした当事者 → 他
   の当事者の順序で質問する(証人尋問と異なることを明示)。
 (3)映像と音声の方法による陳述(215条の3)
4 少額訴訟手続の上限額の引上げ(368条1項)
  30万円 → 60万円へ
5 和解に代わる決定(275条の2)
 ・被告が争わずに,欠席している場合,原告の意見を聞いて,決定
 ・決定の内容
   5年以内の分割支払い
   訴え提起後の遅延損害金の免除
   期限の利益喪失条項付き(2項)
 ・2週間以内に異議がないと確定(3項)
第4 知的財産権関係訴訟の管轄の特例
1 特許,実用新案,回路配置,プログラム著作に関する訴えの専属管轄化
  6条1項 東日本(札幌,仙台,東京,名古屋の各高裁管内)は東京地裁
       西日本(福岡,高松,広島,大阪の各高裁管内)は大阪地裁の
      専属管轄
       ただし,東京と大阪との間では専属管轄違反を問わないことと
      している。
    2項 簡裁事件の場合は,簡裁に加えて,東京・大阪地裁も管轄あり
    3項 控訴は東京高裁の専属管轄
       ただし,第1審が簡裁の場合は,通例の地裁が控訴審
2 意匠,商標,著作権に関する訴えの競合管轄化
  6条の2 管轄一般 + 東京または大阪地裁も可能
3 移送の特例(20条の2)
  第1項 東京または大阪地裁 → 管轄一般の裁判所へ
      専門技術的事項が問題とならない場合,当事者の便宜のために
  第2項 東京高裁 → 大阪高裁へ
      控訴審では,損害額のみが問題となっているような場合
第5 計画審理の推進
1 訴訟手続の計画的進行(147条の2)
2 審理の計画(147条の3)
  審理計画の策定(1項),その内容(2項,3項),変更(4項)
3 攻撃防御方法の提出時期(156条の2)
  審理計画が定められている場合,裁判「長」において,特定の事項につい
 ての攻撃防御方法の提出期間を定めることができる(147条の3は,裁判
 「所」の権限)。
4 攻撃防御方法の却下(157条の2)
  審理計画 + 期間経過後の攻撃防御方法 + 著しい支障
  → 裁判所は却下できる,ただし,相当の理由を疎明したときは例外扱い
  なお,弁論準備手続を行う受命裁判官は却下の権限なし(171条2項)
参考文献
  • NBL 768号,769号,771号
  • 金法 1685号

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