構造計算が成立しても,なお建物建築工事に瑕疵があるとされました

2004年1月14日掲載
2004年3月16日追記

最二小判平成15年10月10日・判時1840号18頁,判タ1138号74頁
判決が重視する前提事実
「上告人(施主)は,建築予定の本件建物が多数の者が居住する建物であり,特に,本件請負契約締結の時期が,平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により,神戸大学の学生がその下宿で倒壊した建物の下敷きになるなどして多数死亡した直後であっただけに,本件建物の安全性の確保に神経質となっており,本件請負契約を締結するに際し,被上告人(請負人)に対し,重量負荷を考慮して,特に南棟の主柱については,耐震性を高めるため,当初の設計内容を変更し,その断面の寸法300mm×300mmの,より太い鉄骨を使用することを求め,被上告人は,これを承諾した。
 ところが,被上告人は,上記の約定に反し,上告人の了解を得ないで,構造計算上安全であることを理由に,同250mm×250mmの鉄骨を南棟の主柱に使用し,施工をした。」
原審(大阪高裁)の判断
「原審(大阪高裁)は,上記事実関係の下において,被上告人には,南棟の主柱に約定のものと異なり,断面の寸法250mm×250mmの鉄骨を使用したという契約の違反があるが,使用された鉄骨であっても,構造計算上,居住用建物としての本件建物の安全性に問題はないから,南棟の主柱に係る本件工事に瑕疵があるということはできないとした。」
最高裁の判断
「しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。
 本件請負契約においては,上告人及び被上告人間で,本件建物の耐震性を高め,耐震性の面でより安全性の高い建物にするため,南棟の主柱につき断面の寸法300mm×300mmの鉄骨を使用することが,特に約定され,これが契約の重要な内容になっていたものというべきである。そうすると,この約定に違反して,同250mm×250mmの鉄骨を使用して施工された南棟の主柱の工事には,瑕疵があるものというべきである。」
コメント
当事者間において,建築基準関係規定を上回る耐震性能を目指して,特定の部材を施工することを約定していたときは,仮に現状の部材にて法令に定める構造計算をクリアーしていたとしても,なお契約違反としての責任を追及できるとした事案です。
一見すると当然の判示のように思えますが,原審の判断にもあるとおり,「計算上ではもちます」との言い訳をついつい許しがちなところ,それをいさめる内容となっています。

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