空クレジットのケースで,保証人に錯誤無効が認められ,支払義務なしとされました
2003年9月17日掲載
最一小判平成14年7月11日・判時1805号56頁,金法1667号90頁
- 事案(わかり易さのため少しデフォルメしています)

資金繰りの苦しいA社は,平成7年12月,X社の加盟店であるB店と通じて,真実は購入しないのに,B店から印刷用機械(P機)を代金300万円で購入するような売買を仮装することとしました(1)。
そして,A社は,B店に一括して支払うはずの商品代金について,X社との間で立替払い契約を締結し(2),X社がB店へ300万円を立替払いし(3),A社はX社へ,手数料60万円を含んだ360万円を,毎月6万円・60回分割にて支払うこととしました。
A社の従業員Yは,A社とB店との間の売買契約が真実は存在しないことを知らずに,X社との間で,A社がX社に対して負う債務について連帯保証しました(4)。
その後,B店は,X社から受け取った金額からA社との事前打合せの金額を差し引いた残額をA社へと渡しましたが,A社の経営は好転することはなく,早くも平成8年2月には,A社はX社への支払いを滞るようになりました。
- 判旨
- 「保証契約は,特定の主債務を保証する契約であるから,主債務がいかなるものであるかは,保証契約の重要な内容である。そして,主債務が,商品を購入する者がその代金の立替払を依頼し,その立替金を分割して支払う立替払契約上の債務である場合には,商品の売買契約の成立が立替払契約の前提となるから,商品売買契約の成否は,原則として,保証契約の重要な内容であると解するのが相当である。
これを本件についてみると(中略)本件立替払契約はいわゆる空クレジット契約であって,本件機械(P機)の売買契約(1)は存在せず,Yは,本件保証契約(4)を締結した際,そのことを知らなかった,というのであるから,本件保証契約におけるYの意思表示は法律行為の要素に錯誤があったものというべきである。
本件立替払契約のようなクレジット契約が,その経済的な実質は金融上の便宜を供与するにあるといことは,原判決の指摘するとおりである。しかし,主たる債務が実体のある正規のクレジット契約によるものである場合と,空クレジットを利用することによって不正常な形で金融の便宜を得るものである場合とで,主債務者の信用に実際上差があることは否定できず,保証人にとって,主債務がどちらの態様のものであるかにより,その負うべきリスクが異なってくるはずであり,看過し得ない重要な相違があるといわざるをえない。」
- 特徴
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- 「主債務者の信用に実際上差があること」を実質的理由として錯誤無効を認めたこと
- 上記1について,動機の表示の有無に全く言及せずに,保証契約の重要な内容であるとしたこと
- 空リース,空ローンの場合にも,本判決の論理が当てはまると思われること
判例批評
- 判例評論535号10頁(判時1824号172頁),金法1684号45頁
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